殺戮は破滅の調べ −後編その1−
の身体に戦慄が走る―。
…この男との勝負は…。
一瞬、だ。
「来い、」
「…言われなくてもっ!」
の脚が地を駆った。
得物を順手に構え、一瞬にして呂布の懐に入り込む。
…この大振りの刃に立ち向かうには、『速さ』しかない…。
の得物が横に薙ぎ、空を白く煌かせた。
刹那。
「ふん。 簡単に俺の懐を取ったか…しかし!」
がきんっ!
呂布の戟が真正面からそれを受け止め、一瞬にして弾いた。
勢いに圧され、身体が後ろへと退がるが…そこで引き下がるではない。
片足を地に着けた刹那、再び呂布の懐に入るべく間合いを詰める。
しかし…。
…何っ!
一瞬躊躇する。
目の前の敵が、何を思ったのか…戟を身体の脇に垂れ下げた。
自ずと駆っていた足が止まる。
刹那。
未だ間合いがあったと思っていた筈の敵が、目の前でを見据えていた。
何処か、寂しそうな笑みをその瞳に湛えて………。
「…破滅の道を選んだな、」
一瞬、己の身に何が起きたのかがには理解出来なかった。
肩口から脇腹にかけて衝撃が走り、そこから熱が一気に放出される。
それが呂布に齎されたものだと気付いた時には、既に身体は力なく地に伏していた。
口の中に広がる金属臭が煩わしい。
「!」
呂布が直ぐにの身体を抱きすくめる。
依然、身体から紅い飛沫を上げながらは男の顔を見上げた。
その顔は―。
戦場はおろか、幾度となく共にした褥でさえも見る事の叶わなかった表情を浮かべている。
「どうして…そんな顔を、するの…?」
訝しげに尋ねながら、は痺れるような痛みと放出する熱に意識を集中させていた。
私の身体から…熱が奪われていく…。
これが、魂の浄化の………始まり、なのね………。
言いようのない快感がの身体を震わせる。
そうか。
これが、奉先の言った 『破滅の道』 ―。
今更ながらには思い至る。
私の求めていたものは破滅へと続いていたんだ…。
彼は、それを教える為に…敢えて私を手にかける事を選んだんだ、と。
「! 俺は、お前を…」
言葉の続きが紡がれようとした唇を、力が失われつつある指で制する。
彼は「本気で手にかけるつもりはなかった」と言いたかったのだろうか。
それとも…。
はその続きを期待していた別の自分に驚いた。
しかし…。
「…言わないで。 未練が、残る…から…」
紅く滲む唇の端を軽く吊り上げ、最期の力で精一杯微笑ってみせた。
なんだ。
もう何処にもない、と思ってた私の 『心』 …。
ちゃんと、私の中に、あったじゃない……………。
繰り返していた殺戮は
破滅の調べを、静かに奏で
そして………
散り逝く華に…雫が一つ、零れ落ちた―。
劇終。
アトガキ
とうとう完成いたしました。
お題の通りに破滅的なお話です…どちらを選んでも待つものは 『破滅』 。
スミマセン…本当にすみません(平謝り
結論はリョフィーとの戦闘を書きたかった、それだけなんですけど…。
少々後味の悪いお話になってしまいました。
救いがありません(苦笑)。
甘さの欠片もありません orz
このようなお話、掲載するのも躊躇われるのですが…。
この後は他の夢でお口直しをお願い致します。
ここまでお読みくださってありがとうございました。
2007.10.3 飛鳥拝
使用お題『殺戮は破滅の調べ』
(当サイト「正真正銘!タイトルお題10連発!」より)
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