殺戮は破滅の調べ −後編その2−










 の身体に戦慄が走る―。


 …この男との勝負は…。
 一瞬、だ。


 「来い、
 「…」
 誘うような呂布の一言に柔らかい微笑みで返す
 刹那。
 得物を順手に構え、の脚が地を勢い良く蹴る。
 …最強の武人に立ち向かう術は、一つ―。
 は一瞬だけ思い巡らす。
 かつて、この男と共に居た時の事を…。
 そして、大きく振り翳された戟の動きを読みながら懐へ入り込むと
 「敵を目の前に得物を振るう貴方………とても好きだわ」
 妖艶な色を含んだ声で呂布の耳元に熱い言葉を吐いた。


 「…なっ!」


 一瞬躊躇する呂布。
 何を思ったのか…突如懐に入り込んできた敵から紡がれた言葉に、自ずと戟を持つ手が止まる。
 刹那。
 首筋にひやりとした刃がによって突きつけられた。
 耳元に触れる熱いものとは対照的に………。





 「…これで終わりよ、呂将軍」










 地に堕ち逝く呂布の首筋から迸る紅を浴びながらは待った。
 己が、望んでいた 『究極の悦楽』 を―。
 しかし。
 彼女の中には悦楽とは違う感覚が渦巻き始めていた。


 …こんな気持ち。
 快感でもなんでもない………。


 「…。 お前は、これで…満足、か」
 ひゅぅ、と冷たい風のような音を入り混ぜながら地に伏せる男が呟いた。
 満足…。
 は悦楽を以って満足を得る筈だった。
 しかし、彼女の中には満足どころか…僅かの快楽すら感じていない。
 「どうして………」
 困惑の様相を呈するの顔を見据え、呂布が眉を顰めながら微笑う。
 最期の言葉を噛み締めるように紡ぎながら―。



 「解らんか…
 ならばお前は、真の雑魚だ。
 俺は、お前の言葉を…土産にして逝く。
 何時か、黄泉で逢おう―」







 「ねぇ…奉先。 …本当に、居なくなっちゃったの?」
 斃れる魂の入れ物の傍らに跪き、そっと手を触れる。
 刹那、その冷たさに驚愕するは………今更ながら気付いた。


 最期の言葉に託された意味に。
 そして。
 失ったものの大きさと、命そのものの重さに…。


 私の求めていたものは…破滅へと続いていたんだ…。
 彼はそれを教える為に…敢えて自ら私の刃にかかったのかも知れない、と。







 「奉先…私は、貴方を………」
 は言葉の続きを口にするのを止めた。
 今更、全てを悟ったところで…それを喜ぶ人は、もうこの世に居ない。
 魂は、既に浄化されてしまった…。
 ふらり、と立ち上がる。
 そして、己の得物を拾う事なく…力ない足取りで踵を返した。





 奉先…。
 既に失われていたと思ってた…私の『心』は………。


 ちゃんと、私の中に、あったんだね………。










 繰り返していた殺戮は
 破滅の調べを、静かに奏で


 そして………
 散り逝く華に…雫が一つ、零れ落ちた―。










 その後―。

 戦場での姿を見た者は、誰一人居なかったという―。










 劇終。







 アトガキ


 とうとう完成いたしました。
 お題の通りに破滅的なお話です…どちらを選んでも待つものは 『破滅』 。
 スミマセン…本当にすみません(平謝り

 結論はリョフィーとの戦闘を書きたかった、それだけなんですけど…。
 少々後味の悪いお話になってしまいました。
 救いがありません(苦笑)。
 甘さの欠片もありません orz

 このようなお話、掲載するのも躊躇われるのですが…。
 この後は他の夢でお口直しをお願い致します。

 ここまでお読みくださってありがとうございました。

 2007.10.3     飛鳥拝


 使用お題『殺戮は破滅の調べ』
 (当サイト「正真正銘!タイトルお題10連発!」より)

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