友、想ふこころ










 「やっほー!」

 ガチャン、と入口のドアを勢いよく開けたかと思えば、軽い調子の挨拶一つ。
 笑みを浮かべてカウンターへと足を向ければ、馴染みのバーテンが作業の手を止め、顔を上げる。

 「いらっしゃ〜い・・・あれ?ちゃん、一人?珍しいねぇ」

 今日は咲夜ちゃんは一緒じゃないの?

 カウンターへ座ると同時に問われるのは、この店に来る時には必ずと言っていいほど傍らにある友のこと。
 一人でも酒を嗜む咲夜とは違い、全くお酒を飲まないが一人でバーに来るなど、ないに等しい。

 「いや、それは私が聞きたい」

 今日は来てないの?
 ここに来れば会えると思ったんだけど。
 あてがハズれたか、と舌打ちのに、「何か急用?」と問えば、そうではないが、と頭を振って、

 「暇だからご飯奢ってもらおうと思ったんだけどなぁ」
 「ちょ、ちゃん・・・」
 「えー?だってねぇ、そうでもしないと、咲夜、仕事ばっかでしょ?」

 偶には息抜きだって必要でしょ。
 咲夜だって人間なんだから、休まないといつか倒れてしまう。

 「まぁねぇ、それはそうだけど・・・」
 「癒しを提供する見返りなら安いもんでしょー?」

 本気か冗談か測りかねるが、咲夜の性格からして、寧ろ何も言わずとも自ら進んで奢るのだろう。
 だからこそのの戯れの言葉。

 最近はあまり顔出してくれないんだよね、と佐助が嘆くところでスタッフルームへと続く扉が開かれる。
 中から現われる相手に、は先ほどと同じように軽い挨拶を投げる。

 「やっほー!小十郎さん」
 「・・・なんだ?お前一人か?」

 珍しいこともあるものだな、と佐助と同じような言葉を吐く相手に、はまた同じ説明を繰り返す。

 「────電話しても出ないしさぁ」

 どうなってんの?と詰め寄るに、落ち着いて、と佐助は苦笑い。
 傍らで小十郎は顔を顰めつつ、

 「酔っているのか?」

 と、万に一つもないことと知りつつ問う。







               *               *               *







 「そういえばさぁ、ちゃん、いつもそのペンダント付けてるよね?」

 暇ができれば顔を出すだろう、という小十郎の言葉に従い、しばし待ってみることに決めた
 サービスね、と差し出される団子とお茶を美味しく頂きつつ、会話を楽しむその合間。
 の胸元で揺れる小振りのペンダントを指して佐助が問えば、あぁこれ、とが手に取って見せる。

 「大切な人からのプレゼント、とか?」

 だったら妬けるよねぇ、片倉の旦那?
 佐助の言葉には一睨みすることで返し、興味のない振りで小十郎は何やら仕事を始めるらしい。

 「ちょっとー少しくらいのってくれてもよくない?」

 冷たいよねぇ、片倉の旦那は。
 それで?
 妬けるそのお相手は、と問えば、

 「誰だと思う?」

 と意地の悪い笑みを浮かべる

 「何?俺様の知ってる人ってこと?」
 「そうだねぇ、知ってると思うよ?」
 「ってことは・・・ホストの誰か、とか?」

 それって選択肢多すぎない?
 ヒント頂戴よ、と畳み掛けてくる佐助に、そんなに知りたいの、とは苦笑。

 「咲夜だよ」
 「・・・へ?」
 「去年の誕生日に咲夜がパーティ開いてくれてね、その時くれたんだ」

 大事な親友からの、大切なプレゼント。
 だからいつも肌身離さず付けてるんだよ、とが笑う。

 「相変わらず仲のいいことだな」
 「あれ?妬いてるの?」

 なんてね、とおどければ、作業の手を止めた小十郎が盛大なため息。

 「それで?去年は盛大に祝ってもらったのに、今年は何の音沙汰もないのが不満なのか?」
 「そうじゃないけどねぇ・・・ってあれ?なんで小十郎さん私の誕生日知ってるの?」
 「昨日あいつが来て言っていたからな」
 「・・・は?昨日咲夜ちゃん来たの?」

 俺様が休みの時に来るなんて!
 そんな偶然ってある?
 俺様滅多に休みないのに!

 と捲し立てる佐助は完全に無視。
 寧ろ、邪魔だ、と押し退け、背後の冷蔵庫から何やら取り出し、そのままへと差し出す。

 「ん?・・・ケーキ?」
 「あぁ。もし万が一お前が来たら出してやってくれ、ってな」

 大きなトラブルを抱えているから当分祝いの一つも言ってやれそうにない。
 せめてもの気持ちに、と咲夜が置いていったのだという。

 「・・・ってそれ凄い人気で朝から並んでもなかなか買えないってやつじゃないの!?」

 この間、真田の旦那が朝一から並んだのに買えなかったって嘆いてた。
 ここにいたら涎垂らしてうらやましがったんじゃない?

 人気の店の人気の品。
 手に入れてくるとはさすが、と一人関心する佐助。

 「・・・私が食べたがってたの覚えてたんだ、咲夜・・・」

 さすが我が親友。
 たっぷり味わって食べないとね!

 「ん・・・美味し!!何!?これ!」
 「そんなに美味しいの?」
 「うんうん。佐助の自慢の一品なんて目じゃないね」
 「うわ!ひどっ」

 俺様泣いちゃうよ?

 「あはは!でも、咲夜は佐助のケーキが一番って言ってたよ?好みに合わせてくれるからって」
 「あぁ、やっぱ俺様のこと分かってくれるのは咲夜ちゃんだけなんだ」

 あーあー佐助がまた何か言ってるよ。
 ちょ、ちゃんひどっ!

 あんまりいじめないでよ、と嘆く佐助。
 は満足気にケーキを頬張りつつ、楽しげに笑う。





 「おい」
 「ん?」

 いつの間にかいなくなっていた小十郎。
 戻ってきたかと思えば、手には大きな花束一つ。

 「・・・あーそういうこと?」

 一人納得の佐助。
 いったい何、と首を傾げるに、小十郎は手にしていた花束を渡す。

 「ハッピーバースデー、ちゃん」

 それは小十郎さんから。
 あ、でも買ってきたのは俺様だし、経費だから・・・お店からのプレゼントだね。

 あはは、と笑う佐助を小十郎は「煩い」と一睨み。
 佐助は肩を竦めるものの、本当のことでしょ、と一言。




 が来る少し前。
 咲夜の勘を信じて、佐助を使いにやった小十郎。
 店にあるマーガレット全てを買い占めて来い、と言われて訳も分からず買いに走った。
 大至急、と言われて、隣町まで必死に走ってクタクタで・・・
 でも・・・




 「その笑顔見られたなら、走った甲斐あったかな」
 「ん?何か言った?佐助」
 「なんでもないよ」

 今日一番の笑みを浮かべ、小十郎へと礼を述べているところであった
 変なの、と小首を傾げつつ、それ以上追及はしない。






 「トラブルって言ったっけ?」

 咲夜は大きなトラブルを抱えている、と言ったか?

 「あぁ、そんなことを言っていた」

 昨日も5分足らずで足早に帰って行った。
 詳しく聞く暇もなかったが、態々他人の店のトラブルを詳しく聞くつもりも端からない。

 「事務所にいるかな?」
 「さぁな」

 事務所と咲夜の自宅は目と鼻の先。
 いなければ自宅の方にでも届ければいい。

 「ねぇ佐助、お願いがあるんだけど?」
 「ん〜?何?」
 「ケーキ、作ってくれない?咲夜好みの佐助自慢のケーキ」

 お礼も兼ねて差し入れにするから。
 お安い御用。

 笑顔で一つ頷いて、すぐに作るね、と手際良く作業を始める。

 「殊勝なことだな」
 「ん?・・・佐助?」

 の言葉に小十郎は顔を顰め、そんなわけがあるか、とため息一つ。

 「お前たちだ」
 「私?」
 「あぁ。あいつも、な」

 友の為、か。

 「そんな大それたものじゃないけど・・・なんかね、分かるんだ」

 欲しいもの。
 して欲しいこと。
 心情。

 ハッキリ言葉にしなくても、目の前にいなくても。
 なんとなく感じ取ることがある。

 「まるで熟年夫婦だねぇ」

 お待ちどう様。
 話に夢中になっている間に出来上がっていたらしいケーキを、は礼を言って受け取る。

 「当然でしょ?長い付き合いなんだから」

 固い絆で結ばれているんだから。
 クスリ、と笑えば、うらやましいね、と佐助も笑う。

 「さて、それじゃぁ頑張る友のところへ行って来ますか」
 「気を付けてね」
 「うん、無理言ってごめんね佐助、ありがとう」
 「どういたしまして」

 今度はまた咲夜ちゃんとゆっくり来てよ、と手を振れば、伝えとく、と

 「小十郎さん、これ、本当にありがとう!」

 帰ってちゃんと飾っておくからね、と笑顔で礼を言えば、

 「あぁ」

 短い返事ながらも、その表情はどこか満足気な笑み。

 「じゃぁね!御馳走様!!」
 「またね〜」
 「気をつけろよ」

 見送ってくれる二人に手を振りつつ、は足取り軽く咲夜がいるであろうホスト街の事務所へと足を向ける。
 驚きつつも笑顔で迎えてくれて、きっと差し入れも喜んでくれるに違いない。
 忙しい合間の、ほんの束の間の休息を喜んでくれるだろう。
 容易く想像のつく友の反応に一人笑みを浮かべつつ、親友の許へ急ぐ。





 事務所があるビルの前につけば、案の定灯りが見える。
 足早に階段を上り、迷うことなく一つの扉を勢いよく開ける。
 驚く相手に笑みを向け、

 「お疲れ様!咲夜。差し入れだよ〜」
 「!?驚いたな」

 いったい何事だ?
 戸惑いつつ、笑顔で迎え入れてくれる友に笑顔で答える。

 支えてくれる友があるから、どこまでも頑張っていける。
 苦しい時こそ、辛い時こそ、笑顔で傍に。
 ささやかな想いものせて。
 束の間の、安らぎとなりますように。。。
















 ☆ 作者さまからのあとがき ☆

はい、毎年恒例(?)ホストのお時間ですw
てか、BASARAで書いてしまった・・・ごめんなさい!
と、いうより・・・ヒロインお相手?(爆)
ちゃんと無双ネタもあったんですけど、こっちのほうがスラッと出来上がってしまったもので。。。
ジャンル違いなんで、受け取り拒否&書き直し受け付けます!
しかも勝手に送りつけですしねorz
ごめんなさいorz

なにはともあれ・・・
姐さん!お誕生日、おめでとうございます!!
姐さんに幸多き一年を!!(祈)

あ、ちなみに、マーガレットは一月の誕生花でした。

2010.1.30 鎹 紫乃瑪



 ☆ ここからは管理人のコメントです ☆

 ぎゃぁぁぁぁっ!!!
 しのめっちゃんありがとう!
 あぁっ!BASARAだよ!こじゅさんだよ!花束だよぉぉぉぅ!!!

 (管理人が紅い津波に浚われたためしばらくお待ちください)

 ぜぇぜぇ………すみません、いきなり取り乱しました(汗
 あまりにも素晴らしいサプライズでしたんで………

 とゆーわけでこちらは紫乃瑪ちゃんのご好意によりいただいたお話です。
 いやもう、無双じゃなくてもいいよ!こじゅさん居るし(笑
 そして、今回も去年のプレゼント同様、私自身がこの世界にwww
 因みにこちらは彼女が展開しているサイトの設定に基づいたものとなっております。
 詳しくはこちら→

 何時ものように悶えながら頂戴いたしました。
 取り扱っているジャンルは違うけれど、とても嬉しかったです!
 (ここだけの話、BASARAではこじゅさん命!でっす)

 最後に――
 この場を借りて紫乃瑪ちゃんに心から感謝します!
 こんなへっぽこ管理人ですが…今後ともよしなに〜。

 2010.01.30   飛鳥 拝礼


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