――次の朝早く、三人は村を出た。

 事件の首謀者を討ち取るため、そして――困っている村人たちを救うために。



 戦いが今、始まる――










 6.笑撃!?の出遭い










 「ねぇ、。 本当にこの道でいいの?」
 「…間違いないわ。 村の人の話だと、村からはここを通らないと行けないらしいし」
 「………朝は流石に寒いね。 僕、もう少し寝ていたかったんだけどな」

 「………嫌だったら来なくてもよかったのよ、小次郎?」
 「うっ、冗談だよ………酷いなぁ」



 森林の茂みを歩き、僅かに白い息を吐き出しながら話を続ける三人。
 しかし、当てもなくこの道を歩いているわけではない。
 村落を出る際、村の女から
 「董卓の居る軍への抜け道を教えましょう」
 とこっそり言われ、少々険しい道ですがと忠告を受けながらもその道を通る事に決めたのだ。

 ………もっとも作戦など、着いてからどうしようとは未だ考えてもいなかったが。







 体中を草まみれにしながらの行軍?は暫く続き、陽が高くなり始めた頃になって漸く開けた場所に出る。
 ここが村の者の言う抜け道の終点なのだろう。
 三人の視線の先にはこれ見よがしに拠点が点在し、その向こうにちょっとした城が見える。
 よく見るとその城は小さいながらも煌びやかに飾られていた。

 「…あそこで間違いないわね」
 「噂には聞いていたけど…あれは僕の想像以上だよ」
 「あーまで派手にやられると流石にツッコむ気も起きないわ」

 三人にそう言わしめるだけの説得力。
 この地こそが董卓の本拠なのだと、誰が見ても解る。
 しかし、流石は悪者と言えど強者だ。
 拠点はそれぞれしっかりと兵に守られており、半端な戦力では突破出来そうにもなかった。

 「…思ったより手強そうね」
 「だから言ったんだよ、作戦会議しようって――」
 「そう言ってる間に寝てたのは君だろ、?」

 ここで漸くどうしよう、と考え始める。
 目の前の状況を見るまで、三人はこの前戦った前田慶次同様、敵は小さな拠点に留まっているのかと思っていた。
 ところがどっこい、董卓はせしめた金に物を言わせて城まで築いていたのだ。
 その『酒池肉林』を形にしたような城を眺めながら三人は大きく溜息を吐く。
 刹那――



 「あ、貴方はもしや――佐々木小次郎様ではありませんか?」



 不意に背後から透き通るような声がかかった。
 その声に驚き、振り向くと――



 見るのもおこがましくなるような絶世の美女がそこに居た。
 馬上に佇むその姿はまるで花のようだ。
 その大輪の花はに優しく微笑みかけると直後、再び小次郎に語りかける。
 しかし――



 「あぁ、やはり佐々木小次郎様でしたね。 ご無沙汰しております」
 「………? 残念だけど僕、君の事知らないよ?」

 「またまた〜そんな事言っちゃって〜! 小次郎、アンタそうやって何人の女の子を騙してきたのよ」
 「ううん。 僕は武蔵意外には興味ないし――」
 「また武蔵かよっ! アンタね、いい加減他にも興味向けたらどう!?」
 「いや、最近君たちにも興味は涌いてきたけど?」

 「えっ!? ホント、マジで?――」
 「………でも、この人の事は知らないなぁ」



 投げかけられる一言で一喜一憂するを尻目に、訝しげに小首を傾げる小次郎。
 その様子を見る限りでは本当に心当たりがないらしい。
 しかし、目の前の一度見れば忘れられなくなるような美女は小次郎と既に面識があるような言い方をしてくる。

 「…ねぇ、どっちが本当の事言ってると思う?」
 「さぁね。 っつーか、無双OROCHIにこんな美女、出て来たっけ?」

 ご無沙汰と言われた小次郎は勿論、も頭に疑問符を浮かべる。
 たくさんの近衛兵を引き連れているところを見ると、彼女は一軍を率いる将であるらしい。
 しかし、ゲームの中でこのような美女が他に出て来ただろうか?



 この馬上の凛とした佇まい。
 優しい微笑とは裏腹に、しかと手綱を握って軍馬を乗りこなす力。
 少々低いが空に澄み渡るような声色。
 そして――



 ――背中に携えられている長い太刀――



 「あ」



 「えぇぇぇぇっっっ!!!!!? アンタ蘭丸っ!?」

 「漸くお解りいただけましたか」
 「解ってたまるかボケッ!?」



 そう――の言う通り、なんと目の前の美女は蘭丸が女装した姿だったのだ。
 この事実には動揺を隠し切れない。

 「うっは、こりゃ女として自信なくすわぁ………」
 「…ダメ、私もう立ち直れない」
 「いや待て、私たちには未だ男装というテが残されている!」
 「………そうだわ、女としてダメなら男装の麗人として――」

 「おぉっ! オス●ル!」
 「…あぁっ! アン●レ!」

 「………君たち、何やってるの?」

 ………まさに『こんな時に何やってんの!?』である。
 流石にこのネタは現地の二人にはついて行けないだろう。
 の可笑しな小芝居を小次郎と蘭丸はただただ唖然とした表情で見つめていた。










 「ふぅん………軍も考えたものだね。 見直したよ」

 それから一時の後――
 お互いの目的が一致した事と、仲間は多い方がいいと言う蘭丸の一言で三人のとりあえずの行き先が決まった。
 予め設えられていた反乱軍の拠点に赴くと、蘭丸とここで待機していた小喬から事情を聞く事になる。



 彼女ら?の話では――
 この事件の首謀者――董卓はこの地の何処かに身を潜めているらしい。
 居場所を突き止めるために何度か間者を送ったが、何れも失敗に終わっている。
 そのため、軍を率いる周瑜は妻である小喬を囮にして誘い出そうと計画した。
 そして、いざという時のために女性武将を後ろに控えさせようとしたが――



 「阿国様とギン千代様だけでは心許ないと思った周瑜様が、私を――」
 「女装させた、ってわけね。 いい趣味してんじゃない、周瑜さん」
 「、それって皮肉にしか聞こえないよ」

 少々困惑気味に話す蘭丸に苦笑を浮かべながらも納得する。
 確かに、『酒池肉林』を連発する董卓を誘い出すには女が一番いい。
 しかし今迄静かに聞いていたはどうも腑に落ちない様子だ。
 絶世の美女に見事変貌を遂げている蘭丸をちらりと見ながら口を挟む。

 「…でも蘭丸がこれだけ綺麗なら、わざわざ奥さんを危険な目に遭わせる事もないんじゃないかしら」

 の言う事はもっともである。
 何故周瑜は己の大事な人を囮にするのか。
 それだけ小喬に信頼を置いているのか、はたまた――



 「違うよ、ちゃん。 周瑜さまはあたしが誰よりも一番綺麗だって言ってたもん」

 「………はいはい、それはご馳走様」



 自分の妻を囮にする周瑜の気が知れない、と思いつつは揃って大きく溜息を吐いた。







 さて、これからどうする――

 「…考える必要はないでしょ、目的は同じ――なら協力して敵を叩いた方がいいわ」
 「それは殊勝な考えだね、。 僕も異存はないよ」
 「確かに………私たちだけの力じゃどーやったって無理だろうし」

 先刻見た敵の陣営、そしてこちらの戦力。
 考えなくても答えは決まっていた。
 三人は軍の精鋭たちに向き直り、大きく頷く。
 そして――





 「…蘭丸、小喬――私たちも貴方たちに協力させてもらうわ」
 「ありがとうございます! 貴女たちのご活躍は噂で聞いていましたから心強いです!」

 「………噂?」
 「はい! 貴女たちは異世界から来た猛将、なのでしょう?」
 「猛将、て………ちょ、待って。 はともかく、私まで――」

 「………私たちが猛将………とぉってもいい響きだわぁ」

 「私も一緒にするなぁぁぁぁっ!!!!!」





 猛将と謳われて気を良くしているはともかく――



 これで、小次郎と反乱軍との連合が、成った――。











 続いてしまうぞぃ!


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 飛鳥絞首刑シリーズ、いよいよ第6弾となりました!
 前回より始まりました新展開、お待たせしてしまってすみません orz

 だがしかし!
 いよいよ登場してまいりました反乱軍!
 いろいろ迷った結果、情報屋のくれた小ネタより呉のシナリオから。
 少々躓いてましたが書いてみたらしっかりとギャグネタが浮かびましたv

 しかし、解りますかね…『ベル●ラ』ネタ(汗

 さぁ、次回はとうとう私お得意!?の戦闘シーンとなります。
 お楽しみにーv

 最後に――
 ここまで読んでくださった皆様と、何時もの如くの情報屋に心から厚く御礼を申し上げます。

 以上、飛鳥でしたv (’10.01.22)




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